【小説】娯楽放浪者的帰属(1)
私はもうずっと、ゲームが中心の人生を送っている。
確か今年で5年だろうか。
長い長い人生基準で考えればせいぜい5年だが、
私の年齢を考えればそれは割合的にかなり高いし、
それに、ゲームの優先順位を最大化した生活が身に染みるには十分な期間である。
いわゆる、ソシャゲだ。スマホ一つでどこでもゲームができる。
「便利な時代になったものだ。」
と、小学生の頃学校から帰るや否や備え付けのゲーム機で遊んでいた少年の口から思わずこぼれた。
ただ、課金はしていない。
お金をかけるほどソシャゲには価値がない。
私はもっと生産的なものにお金をかけたい。
「課金しないの?」
と度々友人に訪ねられるが、その際は
「結局データじゃん?消えたらそれで終わり。そんな自己満に金かけてらんないよ。」
といった定型句が出てくるものだ。
もっとも、この時の私はばかで、これを尋ねられた学校の帰りにコンビニに寄り新作スイーツを買うのだ。
コンビニスイーツは食べたらそれで終わり。そんな自己満である。
また、生産的なものにお金を使いたいくせにそれが何なのか、いまいちよく分からない。
更にこれが最も重大なことであるが、お金をかけるほどの価値を見出していないソシャゲに私は見当もつかないほどの時間を費やしてきた。
当時から時々、「こんなことに時間使ってていいのかよ」と不安になることはあったが、それもそこまで重要視したわけではない。
「今が楽しくて何が悪い。」と開き直っていた。
と、まあこんなふうに私の自己分析ないし自省は完璧である。
では今はどんな暮らしぶりをしているだろうか。
どんな生産的ルーティーンをこなしているだろうか。
ご紹介しよう。
朝起きて、お手洗いへ。
顔を洗い、歯を磨き、
冷蔵庫へ手を伸ばす。私はその時に手を撫でる冷気が好きだ。
取り出したのは飲みかけのエナジードリンク。
そしてテレビをつける。そこに映るのは爽やかな朝番組のキャスター陣ではない。
ゲームのローディング画面。
正確に言えばテレビではなく、ディスプレイか。
そうして昼までゲームをして、
今日も麵をすすりながらゲームで課されたタスクを一流ビジネスマンのようにテキパキとこなす。
気が付くと外が色づき、少し肌寒さを感じる。
これが今日の授業開始合図である。
今日の授業は全部で3つ、すべてオンラインで、オンデマンド型。
なんとなく動画を見て、レポートを書いて、もう外は真っ暗である。
大学生とはいい御身分であるなと自己陶酔しつつ、
先ほどやりきれなかったタスクに集中する。
この後はただ腹がすいたら何か探し求めて満たし、
眠くなったら寝るのである。
「はあ。」
溜息も無理はない。いくら自分のことが分析できて、自省していようとも、
結局ゲームをしているのである。
そんな自分が、嫌になる。
「娯楽放浪者的帰属(2)」へ続く・・・